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現地レポート

大会6日目 男女決勝 「悔しい日々を乗り越えて」 RSS

2016年8月5日 20時45分

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通算で全国大会60回目の優勝を果たした愛知・桜花学園

通算で全国大会60回目の優勝を果たした愛知・桜花学園

 「平成28年度全国高等学校総合体育大会バスケットボール競技大会 第69回全国高等学校バスケットボール選手権大会」の6日目、男女の優勝校が決まりました。男子は福岡・福岡第一が7年ぶり2度目の、女子は愛知・桜花学園が5年連続22回目の、夏の頂点に立ちました。

 展開こそ異なりますが、どちらの試合も優勝したチームにとっては我慢を強いられる決勝戦となりました。
 先に行われた女子の決勝戦は、第4ピリオドの残り5分までどちらが勝つかわからない、拮抗した展開でゲームが進んでいきました。桜花学園の井上眞一コーチも「今日はシュートが入らず、どこで自分たちの時間帯が来るかわからなかったけれど、最後にウチに流れが来ました」と、終盤までは苦しい展開だったと振り返りました。それでも昨日の準決勝、北海道・札幌山の手戦で左足首を捻挫した粟津雪乃選手が痛みに耐えながらシュートをねじ込むと、赤木里帆選手のバスケットカウント、山本麻衣選手のドライブが立て続けに決まって、桜花学園が抜け出します。そして残り1分17秒、それまでオフェンス面であまり目立っていなかったシューターの佐古瑠美選手が3ポイントシュートを沈めて、勝負あり。
 岐阜・岐阜女子も、東海ブロック大会で桜花学園に敗れたときに比べると「(チームは)成長したけれど、まだひっくり返す力はありません」と安江滿夫コーチもこの敗戦を認めていました。

 一方の男子は前半を終えた時点で京都・東山が13点リードしていました。しかし「勝因は練習量だと思います」と福岡第一の井手口孝コーチが言うように、後半、連戦の疲れからか動きに精彩を欠き始めた東山に対して、福岡第一は重冨周希選手と重冨友希選手のツーガードがギアをトップに上げて、東山ゴールに襲いかかりました。200センチの蔡錦鈺選手もアウトサイドからシュートを効果的に決め、第3ピリオドに追いつき、追い越すと、そこからは終始、福岡第一のペースでゲームが進みました。
 東山も岡田侑大選手やカロンジ・カロンボ・パトリック選手、藤澤尚之選手を中心に、最後まで反撃を試みました。しかし、第3ピリオドの序盤に大澤徹也コーチが「ウチのキーマン」と挙げる山内佑真選手が、4つ目のファウルを犯してベンチに下がったところで潮目が変わります。「これまでも山内を外すことはなかったのですが、昨日の準決勝・福島南戦でヒザを打撲して、そこから彼のなかでも何かが変わったように思います。それでファウルを犯してしまって……決勝戦に来るまでに休ませられなかった私の責任です」と大澤コーチは悔いていました。
 しかし、そうした悔いから勝利は生まれるものです。
 福岡第一は近年、県内の争いで福岡大学附属大濠の後塵を拝す時期が続いていました。キャプテンでポイントガードの重冨周希選手は「勝ちたいという思いはあったけれど、どこかで手を抜くというか……自分たちではそのつもりはなかったんですけれど、やはり心のどこかに隙があって負けていたんだと思います」と振り返ります。そのうえで今年度のチームになってからは、「昨年度のチームと比べて気持ちの面も、チームの雰囲気も大きく変わった」と言います。

後半は積極的にゴールにアタックした福岡第一#4重冨周希選手

後半は積極的にゴールにアタックした福岡・福岡第一#4重冨周希選手

 そして今日の決勝戦。前半の苦しい時間帯に、重冨(周)選手はベンチに下げられていました。「キャプテンとして、ポイントガードとしてコートに立っていなければいけなかったのに、少し弱気になって攻めていませんでした。ハーフタイムに井手口コーチから『お前がやらなければいけないんだ』と言われて、もう一度チームを引っ張る力を呼び起こして、後半に臨みました」。前半の悔しさ、自らへの不甲斐なさが後半の爆発につながったわけです。
 中学生時代の全国大会では決勝戦で敗れるなど、最後の最後で悔しい思いを重ねてきた重冨(周)選手。「今日、日本一になるまでコーチたちに叱られて、ダメ出しされて、悔しい思いもしてきたけれど、それを乗り越えたからこその日本一だと思っています。コーチや保護者の方々、チームメイトたちに感謝したいと思います」

 女子の桜花学園もまた、昨年の冬に、どん底に突き落とされたような悔しい経験をしています。ウインターカップの決勝戦で、岐阜女子に逆転負けを喫したのです。当時1年生ながらスタメンのポイントガードとしてチームをコントロールしていた山本麻衣選手は、「ウインターカップでは気の緩みからか、チームディフェンスがうまく機能しなくなって、逆転されてしまいました」と、あの日を思い出しながら、涙がこぼれてきました。その後、東海新人大会、東海大会で岐阜女子と対戦し、いずれも勝利はしているものの、本当の意味での「リベンジは夏しかない」と考えていたと言います。

ディフェンスでもチームを引っ張った愛知・桜花学園#9山本麻衣選手(写真左)

ディフェンスでもチームを引っ張った愛知・桜花学園#9山本麻衣選手(写真右)

 そして今日の決勝戦、我慢に次ぐ我慢を強いられた試合展開になりましたが、山本選手はメリハリのある攻撃を司り、さらには「相手のセンター、ディヤイ・ファトー選手はパワーがあるので、インサイドに入れられるとセンター陣が苦しむかもしれない。だからパスの出し手にプレッシャーをかけました」と、終盤の苦しい時間帯に積極的なディフェンスを見せて、相手のポイントガードを苦しめていました。つまりオフェンスだけでなく、ディフェンスでもチームの先頭に立って、引っ張っていたのです。
 井上コーチが「山本は2年生ではない。もはや3年生レベルのプレイヤーだ」と言えば、本人も「コートに入ったら3年生だと思って、チームを引っ張っています」とハッキリと言います。学年にかかわらず、自らのポジションに責任をもち、プレイに責任を負う。それこそが、最後の最後で桜花学園が自分たちの力を発揮できた、一番の要因かもしれません。

 悔しい日々を乗り越えて、インターハイの頂点に立った福岡第一と桜花学園。しかし、夏の結果は高校バスケットの序章に過ぎません。彼らはここから「高校3冠」に向けて走り出しますが、もし負けた悔しさが次の勝利につながるのであれば、この両校を除くすべての高校に全国制覇のチャンスはあります。なぜなら、早いか遅いかは別にして、両校を除くすべての高校が、負けてこの夏を終えているわけですから。
 ただ、「悔しい。次こそはリベンジを果たしたい」という気持ちは、残念ながらすぐに立ち消えてしまうものです。それをどこまで本気で継続させられるかが重要です。悔しい気持ちを忘れずに、苦しい日々を乗り越えたからこそ、福岡第一と桜花学園の優勝はあるのです。
 国民体育大会もありますが、学校単位での戦いとなると、次の全国舞台は12月のウインターカップです。
 「あの夏の悔しさがあったからこそ、今、自分たちはウインターカップの舞台に立てています」
 そんなコメントを、東京体育館で多く聞きたいと思います。

優勝の瞬間、ベンチ外のメンバーまでコートになだれ込んできた福岡第一

優勝の瞬間、福岡第一はベンチ外のメンバーもコートになだれ込んで喜びを爆発させた

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