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現地レポート

大会2日目 男女2回戦 「積み上げていく“キャリア”」 RSS

2016年8月1日 23時54分

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 「平成28年度全国高等学校総合体育大会バスケットボール競技大会 第69回全国高等学校バスケットボール選手権大会」の2日目は、男女の2回戦が行われました。
 今日から登場するシード校は男女ともに勝ち上がりましたが、一方で男子の昨年度優勝校、宮城・明成が敗れる一幕もありました。これで男女ベスト16が決定し、明日の3回戦ではベスト8をかけて戦います。

 明成を80-61で破ったのは兵庫・育英。育英の沼波 望コーチは「コーチのキャリアで考えれば、明成の佐藤(久夫)コーチと私とでは勝負になりません。それでも負けない勇気をもって臨みました。選手たちにも『育英のバスケットをぶつけて、明成のバスケットに順応しよう』と話し、それを選手たちが1試合を通して頑張ってくれました」と振り返ります。
 育英のバスケットとは「堅守速攻」、つまり激しいディフェンスで相手を苦しめ、奪ったボールを素早く相手ゴールに決めるものです。明成戦ではまさにそれを遂行し、勝利に結びつけました。

インサイドで体を張り続けた育英#15小島 基嵩選手(写真左)

インサイドで体を張り続けた育英#15小島 基嵩選手(写真左)

 起点になったのが2年生センターの#15小島 基嵩選手です。彼の身長193cmは、全国では決して大きい部類には入りません。フィジカルもまだ完成されていません。それでも沼波コーチが「100点満点」と絶賛するセンターは、昨日の沼津中央戦でサンブー・アンドレ選手(201cm)を相手に、また今日の明成戦でも八村 阿蓮選手(194cm)を前に怯まず、「育英のセンターとして責任をもって、体を張ってくれました」(沼波コーチ)

 チーム自体が昨年から「自分たちで戦うようになって、自分たちで『俺たちのバスケット』を見つけるようになった」と沼波コーチは言い、小島選手もまた自分で、どうすれば全国のビッグマンたちに対抗できるかを考えたと言います。
 「やはり1人ではなく、みんなで守るしかない。だから周りのチームメイトとコミュニケーションをとりながら守っています。リバウンドも自分がボックスアウトをして、周りのみんなに(ボールを)取ってもらったり、自分が先にボールに向かって飛ぶことで、相手に取らせないようにするなど、工夫をしています」

 それは沼波コーチの指導によるところもあるそうですが、「京都・東山と練習試合をさせてもらって、(カロンジ・カロンボ・)パトリック選手とマッチアップするなかで体の当たりなどを経験し、自分でもどうするべきかを考えました」と言います。誰かに言われてやるのではなく、自らの意思でやることによって、さまざまなプレイが本当の意味で自分のものになっていく。それを全国の大舞台でも発揮できたというわけです。

 3回戦の相手は東北チャンピオンの福島・県立福島南です。190㎝以上のビッグマンはいませんが、その分、強固なディフェンスと縦への走力を武器としています。
「福島南は速攻を出してくると思いますが、僕も走りでは負けません」
 日に日に成長していく小島選手が、これまでの2試合とは異なる小さなチームを相手にどのような奮闘を見せるのか、注目したいところです。

 敗れた明成の佐藤コーチは敗因の一つとして「キャリアのなさ」を挙げていました。昨年度のチームが高校総体、ウインターカップを制するなかで、当時、「来年(2016年度)は苦労するだろうけど、それを覚悟で今年(2015年度)のチームを作ろうとしてきた」と語っていましたが、「(どこかで負けることは)ある程度覚悟はしていたけれど、やはり負けると辛いですね」と、この敗戦を振り返りました。

 その「高校バスケットのキャリアのなさ」で2年間苦しんできたのが、山口・県立豊浦を82-39で一蹴した静岡・浜松学院です。主力の3年生は同中学で「全国中学校バスケットボール大会」を制し、2年生たちも翌年の同大会でベスト4に入っている、輝かしい「中学バスケットのキャリア」の持ち主たちです。
 しかし高校に進むと、全国制覇はおろか、全国大会への出場もままならぬ現実に直面します。それでも森下 貴之コーチは「彼らは中学時代に全国の頂点に立っていますが、高校に入ってからも、そのときに負けないくらいの練習を重ねてきました」と断言します。その練習で鍛えられた脚力が、相手チームを苦しめるディフェンス力を生み出しました。そしてオフェンスでは、「田中を見ながらバスケットをしろ」という指示の、#13田中 旭選手がチームを引っ張ります。

オールラウンドに得点を重ねる浜松学院#13田中 旭選手

オールラウンドに得点を重ねる浜松学院#13田中 旭選手

 全中では優秀選手にも選ばれた191㎝のセンターは、当時は好きなプレイが楽にできていました。しかし高校では、それらのプレイがことごとく潰されていきます。静岡県内のライバル校には留学生がいるチームもあり、2年間はその高さに対応できず、得点もリバウンドも取れず、「悔しい思いばかりをしていた」と言います。

 「それでイライラして、彼はディフェンスをよくサボっていたんです」と森下コーチが言えば、本人も「イライラして、自分勝手なプレイばかりをしていた」と振り返ります。しかし最上級生になった今年、田中選手は森下コーチの叱咤激励に対し、時に悔しさや自らの不甲斐なさに泣きながらも練習を続けたことで、強さを身につけていきました。森下コーチもそうした田中選手を「プレイに余裕がもてるようになった」と認めます。

 県立豊浦戦では序盤にいきなり2つのファウルを犯しましたが、ベンチで頭をリセットし、チームメイトの助けを得ながら、3回戦進出を決めました。
「明日の対戦相手である新潟・開志国際は優勝候補の一つで、ビッグマンの留学生もいます。でも彼らにインサイドで得点を取らせず、リバウンドも取らせない――つまり仕事をさせずに、自分が得点を取れば勝機はあると思っています」
 強気の発言にも聞こえる言葉には、これまでの悔しさを晴らしたいという田中選手の思いも含まれています。

 勝利も敗北も、その一つひとつが彼ら、彼女らのキャリアになって、より高みを目指すステップになります。インターハイ3回戦の舞台でも、すべての選手に自分たちのプレイを出し切ってもらいたいところです。

沼波コーチが「関西の文化」と言う、育英ベンチの盛り上がり

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